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Keep Moving Forward

2019年に20周年を迎えたのは、ついこの前のような記憶ですが、おかげさまで2024年の今年、25周年を迎えることができました。この5年間は新型コロナウィルス感染症の世界的な流行を経て、社会や経済の潮目が大きく変わったように感じています。

そんな中、ループウィラーを100年ブランドにしたいと以前よりも強く思うようになり、今を、そして、少し先の未来を、どのように乗りこなしてゆくのかと深く考える日々が続いています。

僕は繊維業界、ファッション業界で17年間、企画や生産などあらゆる仕事に携わり、様々なことを学ぶ中で吊り編み機に出会いました。そして、この吊り編み機でできた生地に魅了されてゆきました。高度経済成長の陰で姿を消していく吊り編み機を、なんとか次の世代に残したいという思いでループウィラーを立ち上げたことは、もはや言うまでもないことかもしれません。

1999年に創業したLOOPWHEELERは、当初は自分自身(鈴木諭)そのものであったと思っています。なぜならそれは僕が歩んできた人生経験がなかったら、LOOPWHEELERは生まれていなかったと思うからです。

もちろん、背景にはループウィラーのものつくりを支えてくださっている裏方の職人さんたちに光をあて、そして彼ら彼女らがループウィラーをつくり、支えているという生きがいや誇りをスウェットに内包させたいという強い思いがあったのも事実です。

LOOPWHEELERのコンセプト「世界一正統なスウェットシャツを。」は、僕の中では海賊旗のようでもあり、心の中の日の丸として今もあり続けています。

このコンセプトの核となる吊り編み機は、僕たちが25年間継続してきたこともあり、世界中のスウェット好きの人たちには知られる存在になったのではないかなと思っています。

いま僕たちが使っている吊り編み機は、おおよそ100年前のものです。1960年代前半まではこの1時間に1mしか編むことができない吊り編み機が主流でしたが、1970年代に入ってからの文化は、世代を超えて引き継がれる製品をつくることよりも、より多くの製品をつくることが必要とされるように時代が変化をしてゆきました。いわゆる高度経済成長の時代となった1970年代には、1時間に10m~30m編むことができる高速編み機にとって代わられ、現在ではコンピューター制御でコントロールされ、人手がかからない高速編み機が世界標準となっています。

吊り編み機は「空気を編む」とも言われています。糸にほとんどストレスをかけず、1分間に24回転という目で追える速度で回転します。編み上がった生地は自重で引き下げられ、編み機下部にある丸いトレイに溜まっていきます。このような編み立て工程が、吊り編み機の真骨頂であり、優しい肌触りと長持ちする耐久性を併せ持つ生地ができる理由です。

LOOPWHEELERを立ち上げる時にブランド名をどうするのかと当然のごとく思案しました。しかしながら「吊り編み機」という英単語は、1999年当時インターネットもまだまだ発達していない中、僕たちが手にできる文献や資料の中には存在しませんでした。さて困ったなと古参の業界の方にお聞きする中、そういえば「Fleecy Fabric Knitted by loop wheel machine」と昔、誰かが言っていたのを聞いたことがあるとの会話から、loopとwheelを繋げてそれにerをつけて「LOOPWHEELER」というブランド名にしたのが真実であります。

LOOPWHEELもLOOPWHEELERも僕たちがつくった造語なのです。

後に昭和4年(1929年)メリヤス製造法や、昭和26年(1951年)繊維辞典などの文献を入手して研究すると、「loop wheel」というのは、部品(パーツ)の呼称であり、当時このパーツを使用していた編み機が「吊り編み機」と「トンプキン編み機」の2種類の編み機であったことが判明しました。トンプキン編み機は、別名巻き上げ機とも呼ばれ、編み立て方向が天井に向けて巻き上げられる構造でしたので、現場の職人さんたちが馴染めずに普及しなかったようです。

現在「loopwheel」と呼んでいる人たちの多くは、この真実を知らずして僕たちのLOOPWHEELERからERを取ったものが吊り編み機の正式な英名と勘違いされていらっしゃる方がほとんどです。loopwheelという単語は正式には存在せず、loopスペースwheelが正しい表現ですが、その意味は吊り編み機でもありトンプキン編み機でもあるのです。

この事実が判明してからは、僕たちは「吊り編み機」=「TSURIAMIKI」とオフィシャルに表現することにしました。なぜなら、鮨、ラーメン、焼肉、焼鳥など、日本独自の文化が世界的に認められる昨今においては、同様に25年かけて育ててきた吊り編み文化をTSURIAMIやTSURIAMIKIという和製英語として世界に向けて発信することが、今の、そしてこれからの日本を伝える上でとても大切なことではないかなと考えるようになったからです。

そして吊り編み機でできた生地しか使わないブランドである僕たちはTSURIAMI文化を世界に表現し続けたいと強く思っています。

そうすることが、日本が古来から伝え持つ、日本特有の文化である古いものを大切にし、万物に魂や精神が宿っているのだという精神性を伝えることができるのではないかなと思うからです。

吊り編み機は機械ですので生命や精神はありませんし、スウェットもプロダクトですから同様です。しかしながら吊り編み機に向き合っていると、いつしか編み機に命が宿っているように感じる時があります。そんな吊り編み機から生み出される吊り編みスウェットにも生命やその精神が宿っているように感じることがあるのです。不思議な話ですが、それが着た時に感じる温もりであったり、豊かな感じであったりするのではないかなと僕は考えています。

なぜならそれは人の手を介して出来上がるものだからです。ループウィラーを支えてくれている職人さんたちの思いが、いっぱいにつまっているからそう感じるのだと僕は信じて止みません。

僕たちがとても大切にしているSTAY SMALL、SLOW WORKSという考え方があります。それは吊り編みスウェットを真面目に、正しく、丁寧に、思いを込め、時間をかけてつくりあげてゆくことによって、着てくださる世界中のみなさんが笑顔に、そしてハッピーになってくださることを願いながら毎日を重ねています。

LOOPWHEELERをつくり続けることが、日本でしかできない吊り編み文化をつくりあげることができるのではないかなと考えています。そして日本の工芸のように100年以上に渡り継続し続けてゆくことがLOOPWHEELERの使命のように今感じています。そのために今日を一生懸命生き、明日を迎えることの大切さを伝えて行けたら素敵かなと思っています。

数字や仕様などはもちろん大切ですが、ひとつの道をひたむきにチャレンジし続ける姿勢はもっと大切なのだと思います。時に困難という壁に当たり心が折れそうになる時もあります。しかしながら信じる道をぶれずに進んでゆく揺るぎない信念こそが、人の心に響くのではないかなと僕は信じています。

たかがスウェットなのですが、やっぱり僕たちにはかけがえのないものなのだと思っています。

これからもLOOPWHEELERらしいスウェットをつくり続けてゆきますので、ご愛顧いただけますと嬉しく思います。

― Keep Moving Forward ―

鈴木 諭

Founder & CEO of LOOPWHEELER